第6章 夏風の誘い
話が終わってから再び仲間たちの輪へ戻ると、部員たちの目は一斉に帰ってきた花菜へ向けられた。
集められた視線に、花菜はふと 先程の京治との再会を思い出す。
空気が気まずい。それもそのはずだ。
マネージャーが突然他校の、それも東京の選手と話し出したりしたら我が目を疑うのも当然である。
部員たちの目は明らかに驚きを物語っていた。集まる視線に花菜は気まずそうに目を泳がせた。
そんな気まずい沈黙を、一番最初に破ったのは清水であった。
「花菜ちゃん梟谷の選手と知り合いだったんだね」
「は、はい。東京に住んでいたとき同じ小学校に通っていた幼馴染で」
「まじか… それはすごい偶然だな」
呆気にとられている澤村に花菜は小さく頷く。
「中学に入ってからは連絡もとってなかったから、お互いの高校も知らなかったんです。だから、まさかこんな所で再会するなんて思ってなくて… 私もすごい驚いてます」
一旦京治と離れたあとも、花菜の心臓はまだバクバクと音を立てていた。
もしもこの場に柚がいたら花菜は真っ先に駆け寄ってこの驚きを全力で吐き出していたことだろう。
「でも俺たちが勝ちに行くのは変わらないっすよ。花菜の幼馴染だろうがなんだろうが、ドーンとかかってきやがれ!」
ドンと胸を叩いて西谷が言った。
「相変わらずかっけぇぜノヤっさん!!」
「そうだね」
「「お?」」
烏野がここにきたのは今よりもっと強くなるためだ。まずは目の前の試合に全力を尽くしてからがスタートである。
やる気十分の西谷につられて花菜も意気盛んな笑みを滲ませた。