第6章 夏風の誘い
バスの点検を終えると花菜は必要な荷物をまとめて、急いで体育館の方へ向かった。
バシッとぶつかるボールの音が、もうそこまで聞こえている。
楽しみだ。果たしてどんな試合が見られるのだろう。
新たな情報をノートに書き留められる喜びで花菜の口元には無意識に笑みが滲む。
花菜が体育館に着いた頃には、烏野以外の高校も既に全校揃っており、それぞれがアップを始めていた。
「花菜ちゃーん!こっちこっちー」
奥の方から菅原の声がして、視線を向けるとそこには烏野のメンバーたちが固まっていた。
慣れない場所に来ているせいか、こうしてみんなの姿見つけるとなんだか安心してしまう。
荷物の入ったバッグをぐっと持ち上げて花菜は急いで仲間の元に走った。
「遅くなりました。これ、バスの鍵です」
「ありがとう。助かりました」
顧問の武田に鍵を預けてから、花菜も部員たちの輪に混ざる。
「何か異常とかなかった?」
「はい。大丈夫でした!」
「ありがとうございますッ」
美人と可愛い子に囲まれて、こんな贅沢はなかなか経験できるものではない。マネージャーになってよかったとつくづく思う。
清水と仁花への報告も終えると、花菜はようやく一息ついた。
が、そう思ったのもつかの間である。
「潔子さんが喋ってる…」
「あれがガールズトークってやつなのか…」
田中と西谷の背中を見つけるなり、花菜は思い出したように、ズンズンとふたりに向かって歩いていく。
「田中!夕!」
「「はいッ!」」
今日こそはしっかりと反省してもらわなければ。
目の前に立った花菜の背後には、ゴオオォと炎のエフェクトでもつきそうなオーラを感じる。
田中と西谷はテスト期間の自分達の二の舞を演じることとなった。