• テキストサイズ

初恋リセット【ハイキュー!!】

第5章 それぞれの温度




ドキリと胸が鳴った。


まるで心の中を読まれていたみたいだ。木兎は大雑把な男だが、稀に聡い時がある。


「確かに宮城ですけど…」


確かな動揺を隠すように京治は出来る限りの平常心を装った。木兎の言わんとすることはだいたい想像がついている。


もしかしたらそこに彼女がいて、彼女と再会出来るのではないか──

木兎はきっと、そう言いたいのだろう。だから彼がそれを口にするより先に京治は言葉を紡いだ。


「ないですよ。そんな偶然」


「でもゼロとは限らねーだろ!?」


「そんなことより早く行かないとネット取られますよ」


「待て!俺が一番乗りだ!」


大好物を前にした子供のように全速力で駆けていく木兎の背中を、京治はどこかほっとした思いで見つめた。


「なーにしてんだ赤葦ー、さっさと行くぞー!」


「はい」


鞄を肩にかけなおして京治は木兎の後を追う。



《でもゼロとは限らねーだろ!?》



木兎の言葉が何度も頭の中で木霊して京治の胸をざわつかせた。


そんな偶然あるわけがない。そんなことは、自分が誰よりも分かっている。

それなのに もしかしたら という微かな期待が胸のどこかで踊っていて、京治の心を揺さぶるのだ。


「くそ……」


東京の夏は暑い。

この暑さに溶かされて思考がままなっていないだけだ。


"期待するな"

そう、自分自身へ暗示をかける。


心の中で何度も唱えて京治はぐっと高鳴る胸に蓋をした。

静かに靡いた夏の風が、ほんのり火照った頬には心地よかった。


/ 112ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp