第5章 それぞれの温度
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サァッと吹いた風に誘われるように、ふと窓の外に目を向ける。まだ夏も序盤だというのに、今年の東京はどうも暑い。
暇だな…
窓の外をぼんやりと眺めながら彼はじっと時が経つのを待った。
「やっと終わったなー」
「つーか課題多くね?」
「飯行こーぜー」
右から左へと流れていくように、クラスメイトの会話が耳を抜ける。気づけば授業は終わっていて、机の上には夏の課題がたんまりと積まれていた。
「赤葦ーっ!部活行こーぜー」
廊下の方から聞き慣れた声がした。
学年も違うのに、よくも毎日懲りずにここまで呼びに来るものだ。
部活の先輩である木兎の声に「今行きます」と短い返事を返し、京治は大量の課題をかき集めてドサッと鞄にしまい込んだ。
「そーいや聞いたか?今度の合同練習試合、宮城の高校が一校だけ混ざるらしーぞ!」
部活へ向かう道中、持参のボールをくるくると回しながら木兎が言った。そんな木兎の横を歩きながら京治は小さく頷いた。
「聞きました。烏野高校、でしたっけ」
「あーそうそう!宮城っていうからてっきり白鳥沢かと思ったんだけどなー。まぁいい!どんな奴らが相手でも俺たち梟谷が勝ーつ!へいへいへーい!」
相変わらず騒がしい木兎を気にも止めず京治はスタスタと体育館へ向かう。
"宮城"
京治の脳裏にはひとりの女の子が浮かんでいた。
… 彼女は元気にしているだろうか。
「あーッ!!」
「今度はなんですか」
突然大声をあげて立ち止まった木兎に京治は呆れ顔で振り向いた。
「そーいやー今思い出したんだけどさ、赤葦の幼馴染って たしか宮城に行ったんだよな?赤葦の片想いの子!」
「…!」