第4章 新しい仲間
こうしてみると本当に子犬とじゃれているみたいだ。祖父母の家の愛犬を思い出して、花菜は思わず笑ってしまった。
「わっ、ごめんねっ!なんか舞い上がっちゃってつい…」
「ううん。おかげで緊張も吹っ飛んじゃった」
「それなら良かった。花菜はこの辺りの学校に通ってるの?」
「うん!烏野高校だよ」
「あっ、聞いたことある!でも私 部活とかやってないし、あんまり他校に詳しくないんだよね」
彼女はとことん癒し系だ。もし妹がいたらこんな感じなのかもしれない、と花菜は密かにそんなことを思う。
しょんぼりと落ち込む美羽の頭を花菜はポンッと軽く撫でた。
「美羽の高校は青城?」
「えっ、どうして分かったの!?」
「制服で分かったの。知り合いが何人か青城に通ってるから」
そうだ。知り合いと言えば…
先程送り損ねた及川へのメールを思い出して花菜は慌ててアプリを開く。短い文章を送信すると、びっくりするほど秒で「了解」と返事が来た。
待ち合わせはバイト先の側にある公園の噴水前で、と、あとから付け足しで送られてくる。
返事が異様に早い。もしかして暇なのだろうか?
いや、きっとそんなはずはない。夏明けには春高予選も控えているのだから。
画面とにらめっこを続ける花菜に今度は美羽がクスッと笑う。
「もしかして、メールの相手は彼氏?」
「ち、違うよ。中学の先輩!帰り道、送ってくれるみたいで」
「それって、男の人!?それもう彼氏じゃないの?いいなぁ私もそんな青春送りたいっ!」
きゃーきゃーと騒ぐ美羽をなんとかなだめて花菜はふぅ、と息をつく。
"彼氏"
端から見たら、一緒に歩く私たちはそんなふうに見えているのだろうか。
胸がトクンと小さく鳴る。なんだか少しだけ嬉しかった。