第3章 公式なんていらねぇ!
「月バリ見ました。青城も3年生がほとんど残ったんですね」
「あぁ。このまま白鳥沢に負けっぱなしでいるつもりはないしね。それに厄介な敵がまた一校増えちゃったわけだし、さ」
花菜の打った球をまっすぐアンダーで返しながら、及川はニヤリと口角を上げた。
「飛雄ちゃん達にも伝えておいてよ。次も俺たちが勝つってね」
「分かりました。じゃあ徹先輩も岩泉さん達に伝えておいてください」
バシッともう一度スナップを効かせてボールを打つ。
まるで現役の時のような鋭い変化球に、及川は一瞬 目を見開いた。
「次こそは私たちが勝ちます!」
花菜の打った球は及川の腕を弾いてボンッと地面に転がった。
流れる汗を拭いながら及川はふっと笑う。
「羽のない烏が飛び方を覚えちゃったんだから… ほんと、厄介だよね」
「徹先輩たちはすごく強いです。だから、私たちはそれよりもっと強くならなきゃいけない。次に公式戦のコートで戦うときは、相手が徹先輩でも容赦はしません」
花菜の宣戦布告に及川は小さく笑みを溢した。
「頑張るのはいいけど、あんまり飛雄には構わなくていいからね。ドリンク渡すとか絶ッッ対禁止だから」
どうしてここで、急に彼の名前が出てくるのだろう。
ドリンクを渡すのさえ禁止だなんてどれだけ飛雄の練習を邪魔したいのだこの人は、と花菜は眉をひそめた。
「これから夏ですよ?水分補給は必須ですよ!」
「いいの。あいつすぐ調子に乗るから!話しかけられても無視すること。アドバイスもだめだね」
「それはマネージャーとして承諾しかねます」
「だってムカつくじゃん!飛雄が花菜の近くで練習できて、俺が出来ないとかありえなくない!?」
「だって徹先輩とは学校が違うし…」
「そーゆーんじゃないの!」