第2章 はじまりの夏
「行きますよね!?」
「えっと… どこに?」
「東京!」
顧問の武田からそんな話が出たのは、それから数日後のことだった。
「東京ってもしかして…… 音駒、ですか!?」
武田の話に真っ先に食いついた日向がキラキラした目でそう言った。
都立音駒高校といえば、烏野がインハイ予選前に1度だけ練習試合をした学校だ。
チーム全体のレシーブ力が高く、主将の髪型が特徴的。
花菜の書き留めているノートにはしっかりと音駒の情報も記録されている。
「練習試合っすか?」
日向に続いてそう問いかけた影山に 武田はうん、と頷いた。
「でも今回は音駒だけじゃないんだ」
「どういうことですか?」
花菜の言葉に、武田はあとを続ける。
「梟谷学園グループ。音駒を含む関東の数校で出来ているグループで普段から練習試合などを盛んに行っているそうなのですが… 今回、猫又監督の計らいでその合同練習試合に烏野も参加させてもらえることになりました!」
梟谷学園 ──
なんとなく胸の奥がざわついた。
まだ会ったこともないのに不思議なものだ。東京の強豪と聞いて舞い上がっているのかもしれない。
一体どんなチームなのだろう。音駒よりも強いのだろうか。色々な考えを巡らせながら、花菜はキュッとペンを握る。
「そういうグループは昔から積み上げた関係性みたいなもんで出来てるからツテなしでは、なかなか入れるもんじゃないんだが… 猫又監督に感謝だな。あと、またしつこく頼んでくれたであろう先生にもな」
「いやぁっ、僕はそんな。烏養監督のお名前あってこそで…」
「「「あざーっす!!」」」
と、花菜も一緒に頭を下げた。
こんなチャンスはそうあるものではない。本当に武田先生に大感謝である。
「えっと、ただ向こうはインターハイ予選が今週末からなので、すぐってわけではないです。あと まだお誘いを頂いている段階でして、色々承諾をもらわなければいけないことなど、細かいことはまた後でお話しますね。とりあえず、皆の意思は……」
「もちろん!」
「「「行きます!!!」」」
澤村に続き満場一致。
全員は揃って元気よく返事をした。