第2章 はじまりの夏
メンバーが揃い 全員で練習をしている途中で、本日部活をオフにした張本人である、コーチの烏養がやってきた。
自分でオフにしたくせに、彼まで集合してしまうなんて。これも、チームの全員が先に進もうと前を向いてる証拠だった。
選手たちを集めると、烏養は急遽ミーティングを開いた。
「俺たちは優劣を決める試合で負けた。青城は強かった。俺らはそれに劣った。それが現時点での結果で事実だ」
マネージャーである花菜も選手に混じって一緒に話を聞いた。烏養の言葉をなにひとつ溢さないようにメモをとるためだ。
「で、今日のインターハイ決勝。優勝は白鳥沢だ」
「青城が…」
「負けた…?」
日向に続けて影山が呟いた。あまりの衝撃に花菜も思わず走らせていたペンを止めてしまう。
あの及川たちが負けたのだ。白鳥沢の実力はやはり未知の領域。想像を軽く越える強さなのか。
恐らく、ここにいる選手の誰もが今それを強く実感している。だがコーチが言うようにそれが今の烏野の現状だ。
「県内でさえ、あの青城より上がいる。強くなるしかねぇ。次の目標はもう分かっていると思うが… 春高だ。出場する3年にとっては文字どおり、最後の戦いになる」
"春高"
その響きに選手たちの顔つきがガラリと変わった。
「じゃあ、とりあえずここは主将に一発気合い入れてもらおうか」
「昔 烏野が1度だけ行った舞台…東京。オレンジコートだ。もう一度、あそこへ行く!」
「「「よっしゃーっ!!!」」」
澤村の言葉に一同は揃って立ち上がる。
東京 ──
それは花菜にとっても深い思い入れがある場所だ。
このメンバーで必ず、春高へ行く。
立ち止まっている時間はない。次へ向かって進んで行くしかないのだから。
選手たちにつられて立ち上がると、花菜はぐっと拳を強く握った。