第2章 はじまりの夏
清水と共に向かった先の体育館には、予想通り日向と影山の姿があった。
「時間ない。止まってる暇、ない」
立ち上がった日向が影山に何か言っている。
「でもお昼はちゃんと食べなさい」
「きっ… し、清水先輩!花菜先輩もっ…」
清水と花菜に気がつくと、日向は慌てて背筋を伸ばした。花菜の名前に反応して影山も勢いよく立ち上がる。
花菜はというと、清水の美しい横顔をひとり密かに拝んでいた。
「あと、あまり奇声を発しないように。部室まで聞こえた。ね、花菜ちゃん」
「は、はいっ。その通りです」
清水の美貌につい見とれてしまい、少し反応が遅れてしまった。
花菜が胸を撫で下ろしたのとほぼ同時。反対側の出入り口から田中と西谷の叫び声が響いた。
「潔子さーん!!」
ぴょんぴょんと走りながら清水のもとへ駆け寄るふたり。それをなんなくかわす清水に花菜は何とも言えぬ憧れを感じた。
潔子先輩パワーは絶大だ。少し踏み外せば、彼らに便乗して自分もああなってしまうところだった。
「怪我すんなよー」
田中、西谷に続いて他の2年生も続々と体育館に入ってくる。
─ 残るは3年だけだ。
受験を控えた3年生はこのタイミングで、部活を引退するか残るかの決断をしなければならない。
まだ姿の見えない3年メンバーに日向は焦ったように声をあげた。
「3年生は、3年生は残りますよね?春高に行くって言ったの変わらないですよね?」
「うん。変わらない」
清水がそう言うとちょうどそこへ3年生の3人が走って体育館へやって来た。
いつも通りだ。私の大好きな景色。
「結局みんな揃っちゃいましたね」
そう。ここからもう一度、春高に向けての夏が始まるのだ。花菜の言葉にニッと笑って菅原が音頭をとる。
「行くぞ、春高!」
「「「よっしゃーっ!!!」」」