第10章 幼馴染の肩書き
昼間に影山から及川について問いただされた時もそうだった。
花菜は咄嗟に "看病してもらった時のことを思い出していた" と答えたが実際はそれだけでは無い。
けれど、告白されたことを影山に言うのも恥ずかしかったのであの場はそれで乗り切ったのだ。
花菜が自分で思っている以上に、花菜の脳内はもう及川でいっぱいだった。
こんなに離れているのに。
ふと気を抜いた途端、聞こえてくるのは彼の声ばかり。
「ははーん。その顔はカレシいます!って感じかな?」
「違います!彼氏じゃなくて…」
好きな人が ──
と、そう思ってしまったことに、自分が一番驚いた。
「花菜 顔、真っ赤だけど」
「!」
京治に言われて漸く自分の頬が紅いことに気がついた。そうなっている理由にも。
もう認めざるを得ない。
私は、徹先輩のことが好きなのだ。
本当はもうとっくに好きになっていたのだ。ただ、認めるのが怖かった。今の関係が崩れてしまうのではないか、と怖かったのだ。
「いるんでしょう?好きな人」
京治の言葉に花菜は小さく頷いた。
「ま、マジかよ!?」
目を丸くしながら木兎はチラチラと京治を気にかける。
花菜に好きな人がいると聞いて、京治が落ち込んでいるのではないかと思ったからだ。
幸か不幸か、及川への恋心に気を取られている花菜が木兎の行動に気付くことはなかったけれど。
「はーっ。花菜ちゃんに好いてもらえるとかどんなヤツだよ。幸せ者だねぇ。ね、赤葦」
「黒尾さん…それわざと言ってますよね」
「さぁ」