第10章 幼馴染の肩書き
人の意見に素直に従わないのは月島の元々の性格だ。こればかりは花菜にもどうする事も出来ない。
烏野の一年生はどうしてこうもクセが強いのだろう。
花菜は小さなため息を吐いた。
「悠長なこと言ってるとあのチビちゃんに─ いいとこ全部持ってかれんじゃねえの。同じポジションだろ?」
黒尾の言葉に月島は暫く無言になる。
花菜たちが不思議そうに首を傾げたところで、月島はふっと笑みをこぼした。
「それは仕方ないんじゃないですかねえ。日向と僕じゃ元の才能が違いますからね」
月島がそう言ったのと同じタイミングで第3体育館に音駒の面々がやって来た。
そんな彼らと入れ違いで月島はお役御免だと言って体育館を出てゆく。
「つ、月島くん?」
追いかけようと立ち上がった花菜を月島本人が止めた。
失礼します、と頭を下げた月島は振り返ることなく外の渡り廊下へと消えていった。
「すみません、なんか…」
「花菜が落ち込むことないよ。なーんか地雷踏んだんじゃないスか。黒尾さん」
「え?」
「怒らっしたあ。大失敗じゃん 挑発上手の黒尾君」
いや…と黒尾はため息混じりに息をつく。
「だって思わないだろ?」
「何を?」
「烏野のチビちゃんは─ 確かに得体が知れないし脅威だけど、技術も経験もヒヨコだろ。それにあの身長だし。それをあの 身長も頭脳も持ち合わせているメガネ君が─ チビちゃんを対等どころか敵わない存在として見てるなんてさ」
確かに、と花菜も納得の色を示す。
普段の練習を見ていてもそうだ。月島が日向を馬鹿にする場面はあっても、認めているところは見たことがないように思う。