鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第10章 :少女とハンジの試み〜壁外調査:後編〜
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
〜壁外調査:出発の日 早朝〜
リンは駐屯兵団の門前にいた。
起床時間より少し早い時間の為、門兵2人以外人気はない。
少女はゆっくりと、その内1人の門兵に近付く。
『カイル、おはよう。久しぶり!』
「ッ?!リンさん、お久しぶりです!お元気そうで何よりです。今はトロスト区に?」
『今は調査兵団にいるの。』
少女はクルリと回り、ジャケットの背中模様を見せた。
「調査…兵団?!」
目を見開く。
『今日これから壁外調査に行くんだけど、その前にお願いがあってね〜!』
「壁外調査って…大丈夫、なんですか?」
『うん、カイルも私の力は知ってるでしょ?』
「はい、ですが…心配です。」
『大丈夫!カイル、私の友人を呼んで来てくれる?』
「了解です!」
『あっあともう1人…【おじいちゃん】もね!』
「はい!では少々あちらのベンチに座り、お待ち下さい。」
『うん!』
カイルと呼ばれた若い兵士は、もう1人の兵士に声をかけ少女の友人を呼びに走って行った。
「全く…こんな早朝から誰の呼び出しかと思えば、アンタかリン!」
小柄で眼鏡をかけたショートカットの女兵士が腕を組み、ベンチで優雅に紅茶を飲む少女を見下ろす。
『おはよう、リコ!久しぶり。』
リンは紅茶カップを、手に持ったソーサーに置きニコリと笑う。
「…アンタは他所の門前で、何優雅に紅茶を楽しんでいる?だいたい調査兵団は今日、壁外調査だろう?」
『私は後続班だから、急いで準備しなくていいんだも〜ん!』
カップのお茶を飲み干した。
「リコ班長、申し訳ありません!朝食がまだだと仰っていたので、わたしがサンドイッチと紅茶を用意しました。」
『やっぱり駐屯兵は、良い物食べてるね〜!美味しかった〜カイルありがとう、ごちそうさまでした!』
「いいえ、お役に立て良かったです。」
リンから皿と紅茶を乗せたトレイを受け取り、そのまま食堂に返却しに行った。
リコは大きな溜息をつく。
「それで?壁外調査の朝に、わざわざ駐屯兵団に朝食を食べに来たわけじゃないんだろう?」
『うん、勿論違うよ〜。リコ、お願いがあるの!』
ベンチから立ち上がり、上目遣いでリコを見つめる。
「…嫌な予感しかしない。」