鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第8章 :少女の初陣〜壁外調査:中編〜
〜壁外調査:出発の朝〜
トロスト区の門前に【自由の翼】を纏った、調査兵団達が整列している。
その先頭にいるエルヴィンは、馬上から辺りを見回し誰かを探していた。
「エルヴィン、どうした?」
「ミケ…リンの匂いは、まだしないか?」
ミケはスンスンと鼻を鳴らす。
「あぁ、まだしない。何だ?いないとやはり落ち着かないか?」
「まぁな。」
「彼女は今回、後続班だ。今いなくても仕方ない。」
「あぁ、だが…見送りに来てくれるかと思ってな。」
「来るとは言っていた…だが朝から何処かに出かけるとも、言っていた。」
「そうか…」
ミケはフッと笑う。
「あの子がいないと落ち着かない奴が、お前の他にもいるみたいだな。」
エルヴィンが後ろを見ると…
いつもより仏頂面したリヴァイと、キョロキョロ辺りを見回すハンジの姿が目につく。
(同じか…)
エルヴィンもフッと笑う。
「待ち人が来たようだぞ。」
ふわりと甘い花の香りを感じ…エルヴィンの馬に近付いて来る、小柄な少女の姿が見えた。
エルヴィンは馬から降り、近付いて来た少女の頭をいつものように撫でた。
「リン、見送りに来てくれたんだな…ありがとう。その格好も可愛いよ。」
今日の服装はいつもと違い…腰紐が付いた白いレースのチュニックにショートパンツ&ショートブーツを履き、兵団支給のジャケットを着ている。
そして艶やかな黒髪は高く結い上げ、そこには金色の鈴が付いている。
『ありがとう!あっエルヴィン、手出して。』
「ん?」
少女の前に手を出すと…
そこに色とりどりのお菓子が入った、可愛らしい小瓶が乗せられた。
『これ用意してたの!エルヴィンにもお裾分け。疲れたら食べてね!私も後から追いかけるから。』
「あぁ、待ってる。…リン、初陣だからって張り切り過ぎるなよ。」
『うん!エルヴィンもね!』
少女は笑顔で敬礼をして見せた。
「ほら…後ろにも、君の見送りを待ってた奴がいる。顔を見せておいで!」
『分かった〜!』
走って行く少女を見送った後、エルヴィンは表情を引き締め、小瓶を胸のポケットに入れると馬に跨った。
「さぁ、行こう!」