鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第7章 :壁外調査〜幕間❶〜
〈 ハンジの場合 〉
食堂に向かうと…ハンジが生気を失くした虚ろな目で、食べ終わった皿を見ている。
リヴァイとリンは静かに食堂に入る。
同時にリンは、唇に1本の指を立て【シー】とする。
いつもリヴァイ達が食堂に入ると敬礼や挨拶する兵士達も、リヴァイの前を歩くリンの可愛らしい仕草を凝視し…顔を赤らめながら大人しく見ている。
(何だ、その可愛い仕草は…男をむやみに誘惑しやがって!)
リヴァイはリンに釘付けの男兵士を、目線で殺すかのように睨み…視線を散らす。
そしてリンはハンジがいるテーブルの前に立ち、リヴァイに教わった敬礼と共に声を上げた。
『ハンジ分隊長、お疲れ様です!』
「えっ?!」
ハンジは驚き顔を上げ、一瞬で顔に生気が戻った。
「リン…今何て?」
『ハンジ分隊長?』
「や〜め〜て〜!!リンにだけはそう呼ばれたくない!!」
ハンジは立ち上がると髪を搔きむしり、大声で泣き叫ぶ。
「リンは兵士じゃないし、もう私達は友達でしょ?そんな風に呼ばれたら…悲しいよ!」
リンを引き寄せ、抱きしめようと手を伸ばしたが…リヴァイに阻止される。
「その汚ねぇ姿で、触るんじゃねぇよ!」
リンを後ろから引き寄せる。
ハンジがふとリンを見ると…何故か笑っている。
『リヴァイの言うとおりだね!でもまさか、あんなに激しい感情が見えるなんて…ごめんね〜ハンジ!』
両手を口の前で重ね、可愛くペロッと舌を出し謝るリンを凝視し…その後ろにいるリヴァイの表情も見てやっと、2人の策略に気付く。
「リン、リヴァイ!酷いよ〜!!」
「悪かったな。だがお前も好きだろう?こういう事が。」
リヴァイは楽しそうにニヤリと笑い、ハンジを見上げる。
「はぁ?誰がこんなタチの悪い…」
「これからエルヴィンの執務室に行って、同じ事をするつもりだ。余裕ぶったあの表情が変わる瞬間、お前は見たくないか?」
「…見たい!めちゃくちゃ見たいぜ〜!!」
リヴァイは【ほらな】と言わんばかりにフッと笑い、2人顔を見合わせた。
「まずはてめぇの書類を何とかしろ!」
手元の書類も渡す。
「了解!」
ハンジは意気揚々と、執務室に戻って行ったのだった。