鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第5章 : ◆◇ 心の居場所 〜自覚〜 ◆◇ /リヴァイ
壁外で初めてあいつを見た時…
ただ綺麗だと思った。
風に靡く黒く艶やかな髪・白く透き通る肌・小柄な身体に見合わない長い刀を持ち、凛とした瞳で前を見据える姿に…悔しいが見惚れた。
再会した時…
嬉しそうに菓子を頬張る姿が、単純に可愛いと思った。
こんな顔もするんだな。
まぁ俺を見て『チビ』と口を開いた瞬間、殴りたくなったのも嘘じゃねぇが。
だがアイツは…俺の顔が怖いと言いながらも物怖じせず、俺に突っかかって来た。
面白い。
あの女に興味が湧いた。
もっと知りたいと思った。
他にどんな顔を見せるのか、あの口で何を発するのか…毎日楽しみになっていた。
数日経って気付いたが…
あいつは俺の名だけ呼ばなかった。
ハンジやエルヴィン、あのゲルガーでさえ名前で呼ぶのに…俺だけ呼ばれねぇ。
これは一体どういう状況だ?
ハンジと茶を飲む話が聞こえ…一緒に茶でも飲めば、今度こそ名前を呼んでくれると思った。
結局茶を飲む暇もなく、掃除して終わったが…やっぱりあいつは俺の名を呼ぶ事もなく、しかもかなり怒っていた。
部屋に入った瞬間、あいつの部屋の汚れがどうしても気になり…抑えられなかった。
それだけは悪かったと思ってる。