鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第23章 :7章 番外編 いじめと本音と制裁と
少女の部屋の扉を開けると…中は大惨事だった。
部屋中に切り刻まれた布の切れ端が散らばり、酷い有り様だ。
「ひでぇな…」
リヴァイは舌打ちし呟く。
ふと横を見ると…扉の前で動けなくなっている少女が、現実から目を逸らすように俯いている。
リヴァイはポンポンっと優しく頭を撫でると、先に部屋の中に入った。
「リン、お前も来い。」
少女はゆっくりと部屋に入る。
散らばる服の切れ端を見て…涙を堪える。
「こっちだ、ここに座れ。」
リヴァイは少女のベッドに座り、自身の膝を叩く。
少女は静かに近付き、リヴァイの膝に大人しく座った。
「お前は我慢し過ぎだ。泣きたきゃ泣けばいい。俺の側なら、いくらでも泣いていい。」
そうリヴァイが優しく少女の頬を撫でると、少女の瞳からポロポロと雫が流れ落ちた。
『…本当は凄く悲しかった。でも私は東洋人だから、嫌われても仕方ないって…。』
「お前が【東洋人】だからじゃねぇ。ただの醜い女の嫉妬だ。」
リヴァイは少女の頬を優しく何度も撫でながら、流れる雫を親指で拭う。
『そう…なの?』
「あぁ。つまり嫉妬されるくらい、お前が羨ましいって事だ。だからお前はお前らしく、堂々としてればいい。」
『うん…』
「それでも泣きたくなったら、俺の所へ来い!全て受け止めてやる。」
『うん…ありがとう、リヴァイ!』
リヴァイがクラバットを外し、少女の濡れた瞳を拭うと…やっと笑みを浮かべたのだった。
「よし、片付けるぞ。」
リンを膝から下ろし、切れ端を拾い始める。
『リヴァイ…これ、捨てなきゃダメ?』
「……。」
『捨てたくない。切れ端だって…大切なの。』
「…誰が捨てると言った?」
『えっ…』
「切れ端を集めれば、その形が分かる。お前が愛用してる仕立て屋なら、切られた服の原型が分かるんじゃねぇか?」
『この服…元に戻るかな?』
「その切れ端を原形に戻すのは…無理だろうな。だが普段お前が着てる服はどれも、精巧な作りをしている。その服の仕立て屋なら、その切れ端の利用方法も分かるだろう。」
『そっか…そうだね。』
「分かったらさっさと、片付けるぞ!」
『うん!』
いつもの元気を取り戻した少女に、リヴァイはフッと笑う。
そして2人は、部屋の片付けを再開したのだった。