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鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】

第20章 4章 番外編 悲しみと幸せの誕生日



食堂の扉は閉ざされていた。
いつもは食事の時間が終了しても、休憩用に開放されている食堂だったが…今日だけは何故か閉まっている。

『あれ…扉閉まってるよ?入れないんじゃない?』
「大丈夫だよ!先にモブリットが戻ってるし、ちゃんと伝えてる筈だから。」
『でも…』
「いいから、いいから!早く扉開けて。」
『分かった…』

少女は扉のノブを回し開いた。
室内は真っ暗で、何も見えない。

『明かりを…』

少女がそう呟き、ランプに手を翳そうとした瞬間…




パン!パン!パン!



大きなクラッカー音が突然鳴り響き、一斉に明かりが灯る。


「リン(さん)、誕生日おめでとう!!」


食堂にはエルヴィン・ナナバ・ミケ・ゲルガー・ペトラ達リヴァイ班は勿論の事、兵舎内の兵士や食堂で働く者達までいた。

『……えっ?』

少女は愕然と立ち尽くす。


「リン、誕生日おめでとう!今日が誕生日だってさっき聞いたから、あんまり準備出来なかったけど…やっぱりお祝いはしたくてさ〜。これ、モブリットの案!」

ハンジはニカッと笑う。

『だから先に帰ったの?』

モブリットを見つめる少女。

「せっかくの誕生日、悲しみだけで終わらせたくなくて。」
『ありがとう…モブリット!』
「うん。」
頭をポンと撫でる。

「あっほら!リンの大好きなフィナンシェや、大きなケーキもあるよ!」

ハンジは少女の手を引き、ケーキの前に立たせる。
自分の背より大きなケーキに、少女は目を丸くする。

「このケーキは贈り物だよ。さっき届いたんだ。送り主の名前が書いてないんだけど…誰か心当たりある?」

ナナバがそう言い…考える。


(これは…)

少女は記憶を遡る。


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『わたしね〜いつか自分の背より、大きなケーキを食べるのが夢なの!』

「そうか…じゃあ16歳の誕生日、楽しみにしていなさい。クレイもきっと喜んで協力してくれる。」

『やった〜楽しみ!』

----------------

(お父さん…クレイ、ありがとう!)

記憶の中の父と男に、心の中でそっとお礼をした。



「さぁ、楽しもう!誕生日の夜はまだ、これからだよ。」

『うん…みんな、ありがとう!!』

少女は兵舎に来て初めての最高の笑顔で、皆にお礼を言ったのだった。

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