鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第2章 :守護獣と心の傷
「そういえば…リン達は、どうして隠れて暮らしてるの?東洋人が【非常に稀な人種】って事は知ってるけど…誘拐されたりするから?」
『何を…言ってるの?私達が今まで何をされて来たか…何故あなた達は知らないの?誘拐だけじゃない…私達は迫害されてた!人を人とも思ってない奴らに、高値が付くと執拗に狙われ…売られて家畜のように扱われる。だから私達は、隠れて暮らすしかなかった。そんな事も知らないなんて…』
〔落ち着け、リン…〕
[仕方ない事だ。彼らは【世界の真相】を知らない。]
※〔〕は守護獣が声に出してる言葉、[]は頭の中で守護獣と会話してる言葉
ヒートアップするリンを、ライキが落ち着いた声で制する。
周りもいつもの様子が違う彼女に驚き、呆然としていた。
その中でリヴァイとエルヴィンだけは、しっかりと少女の目と表情を見ていた。
『ッ…そっか、そう…だったね。取り乱した…ごめん。』
「いや…私こそ無神経な事を聞いたね、ごめん。ねぇリン…やっぱり君が知ってる【外】の事、まだ教えて貰えないのかな?」
『ごめん…私には、それを口にする権限はないの。』
目を伏せた。
「そっか…。」
(彼女の口から出た【外の真相】に辿り着く為には文献だけじゃなく、東洋人がなぜ迫害されているのか…それも調べる必要がありそうだな。)
なぜ迫害されているか。
王が壁外の秘密を記憶改竄出来なかったからだと…そんな勝手でくだらない理由を、壁外のもっと先に何があるかも知らない彼らに全て吐き出せたらどんなに楽か…リンは唇を噛んだ。
暫く沈黙が続き…気まずい状態に耐えられなくなったリンは、静かに口を開く。
『私…先に兵舎戻るね。昼食のスープ、味付け確認しなきゃ!』
食堂のスープはあの日彼女が作って好評だった為、今は最後の仕上げだけ担当している。
『ライキ、行くよ!』
〔了解した!〕
ライキの背に乗りそのままふわりと浮き上がると、空へ溶けるように消えた。