鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第16章 :帰る場所〜終わりの始まり編❸〜
部屋の中に静寂が訪れる。
リンは天井を見上げ、そのままベッドへ後ろから倒れ込んだ。
(人を…殺す?私に出来るの?いくらマナとフェイを取り戻す為だからって、そんな事…)
『無理だよ…』
呟き、腕で顔を覆う。
すると何もない空間から白き獣が姿を現し、ベッドの近くへ座った。
[マスター、リヴァイを恨むな。あの男は、我ら全員の気持ちを代弁したのだ…貴女に嫌われる覚悟で。]
『……えっ?』
少女は身体を起こし、ライキを見つめる。
[怪我を負わず…フェイを正気に戻す方法は、術者を殺すしかない。見解を示したのは我らだが、主にそれを強要する事が出来ない。その代弁をリヴァイが買って出たのだ。我らはリヴァイに感謝している。]
『………。』
[今まであの男が、どれだけ貴女を助け導いたか…貴女が1番よく知ってる筈ではないか?そしてあの男の想いも…]
白き獣の金色の瞳が、少女の瞳を捉える。
『ッ!分かってる…リヴァイは間違ってない。リヴァイはいつも側にいてくれて、大切に想ってくれてる。…酷いのは私。リヴァイを…傷つけた。』
ギュッと両手でネグリジェを掴み俯く。
[人は…生きてる限り、過ちは正せると聞いた。貴女とリヴァイは生きて近くにいるのだから、正せる筈だ。]
顔を上げ、ライキを真っ直ぐ見つめた。
『…うん、そうだね。私…リヴァイに謝って来る!』
ゴシゴシと両目の涙跡を消すように擦り、勢い良くベッドから起き上がるとそのまま扉へ向かう。
[マスター、覚えていて欲しい。貴女の亡骸は契約通り我らの物だが…我らは貴女の死を望んだ事は、一度もない。貴女は我らの家族で、大切な娘のような存在だ。もっと自身を大切にして欲しい。]
『うん、ありがとう!私も大好きよ。だから…フェイを一緒に取り戻す為、手を貸して!』
[了解した]
そう一言答えると、白き獣は消えた。
少女はニッコリ笑うと、自室を後にした。