鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第16章 :帰る場所〜終わりの始まり編❸〜
『だったら…呪具を壊す!ハンジの薬があれば痛みも感じないし、油断さえしなければ…』
顔を上げ、リヴァイを睨むように見つめた。
「一切、怪我は負わないか?さっきも言ったがその状態で更に傷を負えば、死に近付く。お前は目覚めた時言ったな?【生きる】と。ならどうすればいいか…分かるな?」
『どうして…そんな事言うの?リヴァイは知ってるでしょう?私がこの力で人を殺す事が、1番怖いって!なのに…酷い!』
瞳には雫がみるみる溢れていく。
リヴァイはそんな少女から目を逸らさず、言葉を紡ぐ。
「…次は俺も一緒に行く。お前だけに背負わせねぇ!少し傷付けるだけでいい。傷の回復に注意が逸れれば結界も消えるだろうから、その間に俺がとどめを刺す。」
(そんな…事…)
少女の脳裏に、数ヶ月前の光景が浮かぶ。
兵舎の見知らぬ男に突然抱きしめられ、力で吹き飛ばした事。
男の意識ない身体が床に倒れ、動かなくなった様を。
殺してはいない…だが殺しかけた。
制御出来ないこの力で、人を殺しかけた恐怖を…思い出し震える。
『無理だよ…まだこの力、制御も出来ないのに。怖い…。リヴァイは地下街で慣れてるかもしれないけど、私は違う!私はッ…あっ、ごめ…』
「…謝る必要はない。お前の言う通り、俺はそういう事に慣れてる。今更人数が増えたところで、特に問題はない。」
『慣れ…てる?』
「地下街で生き抜く為に…な。」
『生きる…為に…』
リヴァイは少女の頬を両手で挟み、目元から零れ出た涙を親指で優しく拭った。
そして視線を合わせる。
「リン、選べ!お前の意思で、お前が選択しろ。だが忘れるな!お前を想う奴らの顔を。何の為の戦いなのかを。」
『………。』
「明日の朝、迎えに来る。それまでに決めろ!」
リヴァイはそのまま静かに、部屋を出て行った。