鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第16章 :帰る場所〜終わりの始まり編❸〜
ゴン!
ハンジの言葉を遮り、部屋の外で扉を蹴る音が聞こえた。
「おい、誰か開けろ!手が塞がってる。」
声が聞こえ扉を開けると…温かいスープとパンを乗せたトレイと水差しを手に、リヴァイが立っていた。
「リヴァイ、食堂にそれを取りに行ってたのか?それにしては遅かったが…まさかそれ、お前が作ったのか?」
「あ?そうだが…何だ?」
エルヴィンは目を見開き、ハンジはあんぐりと口を開けている。
(リヴァイが誰かの為に食事を作るのは、初めて見たな…。珍しいものが見れた。)
エルヴィンは未だ唖然とするハンジを横目に、ほくそ笑む。
ペトラとニファも手を止め、リヴァイを凝視する。
(え?え?兵長が作ったの?)
(こんな兵長、初めて見た…)
そんな4人の姿は気にも留めず、リヴァイはツカツカとベッド横へ歩きリンを見つめた。
「菓子だけじゃ栄養が足りねぇ。薬飲む前にこれも食べろ!」
トレイに乗った皿を見せると、少女はまた嬉しそうに笑った。
『これ…リヴァイが作ってくれたの?嬉しい!ありがとう!』
「残すなよ?」
リヴァイは口元を緩め、傷口に触れないようにベッドに小さなテーブルを置き…その上にトレイを乗せた。
スープは湯気が立ち上り、まだ出来立てだった。
美味しそうな香りが部屋に充満し、お腹がまたグーっと鳴る。
スプーンで掬い口に入れると…玉ねぎの甘さとコンソメの優しい味が口内に広がる。
『美味しい!玉ねぎ…ちゃんとあめ色に炒めて、入れたんだね。』
「あぁ、以前お前に教えて貰ったレシピで作った。これにパンを浸すと、更に美味いんだろ?」
『そうなの!この上にチーズ乗せると、もっと美味しいんだけどね〜』
リヴァイからパンを受け取り、千切ってスープに浸していく。
「チーズなんて高級食材、兵団にはねぇ!」
『そうなの?じゃあ今度は私がチーズ乗せたオニオンスープ、作ってあげるね!』
「あぁ…楽しみにしている。ほら、サッサと食え。薬も飲めよ?」
『は〜い!』
「リンはもう、大丈夫そうだな。」
エルヴィンはベッドから離れ、小声でハンジに話しかける。
「そうだね。あとは、例の件を話すだけだけど…大丈夫かな?」
「リヴァイに任せるしかない。」
2人はリンとリヴァイを見つめ、静かに部屋を出て行った。