鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第12章 :運命の再会〜終わりの始まり編❶〜
〜ライキが執務室に現れた同時刻〜
(リヴァイのバカ!言いたくなかったのに…)
何故"リヴァイに"は言いたくないのか分からず、イライラしながら食堂に向かっていたリンだったが…気付けば食堂の裏口まで来ていた。
裏口は食材が届けられる場所で、普段人の出入りは殆どない。
搬入がない際は明かりを灯す事もない為、夜になれば辺りは真っ暗だ。
(裏口に来ちゃったみたい…戻ろう!)
踵を返し戻ろうとしたが、ふと人の気配を感じ立ち止まる。
『誰?』
知らない気配だ。
(ライキ…いない?そっか、さっき私…)
リヴァイと買い物に行った事を思い出し、急に不安になる。
「リンさん…ですよね?」
暗がりから男が1人、現れた。
暗くてよく見えなかったが、近付く男は調査兵団の制服を着ている。
少しホッとするが、何故か不安は消えない。
(いつも守ってくれる存在がいないだけで、こんなに不安になるなんて…。)
当たり前のように側にいた、守護獣の存在の大きさを初めて実感する。
リンは大きく深呼吸をすると、男に向き直った。
『貴方は誰?ここで何をしているの?』
「あっ俺、調査兵団のリロイと言います。リンさんがこちらに向かうのを見かけて、裏口が開いてない事を教えに来たんです。」
『あっそう…だったの、ありがとう。…じゃあ、戻ろうか。』
理由が分かり少し安心するが、見知らぬ男と2人という状況に耐えられず…リンは食堂へ足を向けた。
後ろの存在が気になり、少し速足になってしまう。
「あっあの、覚えてないかもしれませんが俺…壁外調査の時、貴女に助けて貰ったんです。ずっとお礼が言いたくて…」
突然後ろから話しかけられ、ビックリしたが…男の言葉で足を止め振り向く。
「あの時は、ありがとうございました!!」
男は深々と頭を下げた。
少女は困惑する。
お礼を言われたが、その男の記憶は全くない。
あの時覚えているのは、言葉を交わした3人の少女だけ。
『ごめんなさい、覚えてないの。あの時は色々と大変だったし…』
「そうですよね…いいんです、俺がお礼を言いたかっただけなので。」
男は頭を上げ、少し切なそうに微笑む。