鈴の音が届く距離で〜始まりの章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第11章 :番外編 夜会❶〜彼女のパートナーは誰?〜
『でも…私も恋ってよく分からないから、何がしてあげられるか分からないんだけどね〜。』
「えっ?リンさん、初恋もまだなんすか?」
『ん〜初恋…なのかな?同郷で兄のように慕ってた人がいたの。昔は結婚の意味も解らず、その人のお嫁さんになるとか言ってた。でも突然いなくなって、長い間会えなくて…いないのが当たり前になった。今ではもうあれが恋だったのかさえ、分からないの。』
「…亡くなったんですか?」
ジャンはおずおずと、少女の様子を伺う。
『…どうだろう?私が居ない間に突然旅に出るって郷を出てから、もう5年以上も会ってないから…正直生死も不明なの。でもこの先一生会えなくても、何処かで生きて元気でいてくれたら…それだけでいいって私は思ってる。』
懐かしそうに…しかし切なげに、少女は微笑んだ。
『でも…今日の数回のため息は、ミカサの事じゃないでしょ?何悩んでるか、そろそろ白状したら?』
食後のデザートとお茶で一息付き、リンはそう切り出す。
「…敵わないっすね、リンさんには。」
ジャンはため息をつき、苦笑した。
「まぁ…大した事じゃないんですけど、うちの母親が体調崩したって親父から手紙が来たんっす。で親父が顔見せに来いとか言うから、めんどくせぇなと…」
『…ダメ!会いに行かなきゃダメ!いつ会えなくなるか分からないんだから、会えるうちに行かなきゃダメ!大切な人ほど、失ってから気付くから…』
手に持っていたカップをソーサーに置き、ジャンの目を真剣に見つめた。
(リンさんも誰か大切な人を、失ったりしたんだろうか?アイツみたいに…。)
エレンの顔を思い出し、慌てて打ち消す。