第10章 果てる
帰宅し、おばあちゃんに挨拶をする。仕事から帰ってきたおじいちゃんに挨拶をする。
悲鳴嶼先輩に言われたことを思い出しながら、私は晩ごはんのあとのデザート…昨日食べきれなかった桃を食べていた。
「私、ひどい娘だよね。」
フォークで桃を刺した。
おじいちゃんとおばあちゃんが唖然としていた。
「私、何も知らないまま二人を見放してしまったんだ。」
桃が甘い。
美味しくない甘さだ。熟れすぎなのかな。
私は悲しい。誰からも見放されたくない。それなのに、私は両親を見放してこの家から追い出した。
「…」
「桃色だから桃は桃なの。わかってる。私、中身の話をしたの。桃の中身って桃色じゃない。だから、何で桃色だけが桃の色って言うか不思議だった。」
バカバカしい。とんだワガママ娘だった、私は。
「外しか見てないから、中まで見てないんだよ。外だけ見て桃色って言うんだ。私もそう。あの二人だって優しい人だったのに、私、外側しか見てなかった。殴られて、ひどいことされて、それだけで見放してしまった。
私、いつしか暴力的な外側だけで、桃色だけであの二人が怖くなって。あの二人には桃色しかないって決めつけたッ…!」
だんだん声が大きなくなる。
「今になって、内側の、優しい笑顔とか、皮がない、中身しか見えない桃みたいに、そんな思い出ばかり、出てくるの…!」
悲鳴嶼先輩の言葉は本当に胸に響いた。
ひどい話。私は馬鹿だ。前世と今世は違う。それなのに、前世みたいに、もうやり直せないって。そう決めつけて。私は今世の両親を見放した。
「悪くない、お前は悪くないよ。」
おじいちゃんはポンポンと肩を叩く。
「桃ってのはなぁ、甘くて美味しいんだ。見た目で判断してもしょうがないさ。最後に食べて、お前が笑ってたらおじいちゃん達は嬉しいよ。
生きてる限り父さんにも母さんにも会える…。気持ちのやりくりがうまくできないのはようくわかるから、そう思い詰めるな?おじいちゃん達、が笑ってくれりゃあそれでいいんだ。」
おじいちゃんは、最後に付け足した。
「お前の父さんと母さんも同じだ。わかってくれるね。」
私は頷いた。