第10章 果てる
「……それは…」
私は結論を出した。
「悲しいです。私を受け入れてくれないのは、悲しいです。」
悲鳴嶼先輩は頷いた。
「ならばお前もお前を受け入れるべきだ。悲しむな、私も悲しいから。」
先輩の目から涙がこぼれ落ちた。私はぎょっとした。
だ…男子が泣いているところなんて、夏休みの宿題を忘れてきた、小学校の田中くん以来だよッ!!!
「せ、先輩、あの」
「……すまない」
先輩は涙をこぼしたまま謝った。何に謝られたんだろう。
「すまない、私はお前にはやく伝えるべきだった。私は、口を閉ざしてしまった。」
「え、あの、何を」
戸惑う私をよそに先輩の涙がやっと止まった。
その時、私は気配を感じた。
「あ、あぁ、私、もう行かなくては。同期の子が呼びにきました。そろそろ終わりのミーティングです。音楽室に人が集まってます。」
「そうか。」
「ありがとうございました、本当に。先輩…泣いてまで、ありがとうございました!」
私は階段をかけ上がって楽譜と譜面台を持った。
同期は音楽室のある二階からやってきている。
私は階段をのぼる前に下を見下ろした。しかし、もうそこに先輩はいないのだった。
「おい!!そろそろ来い!!」
「今行くー!」
ほら、予想通り。実弥だった。
「ねぇ実弥」
「あ?」
「あなた、私が実は妖精さんに囲まれてるエスパーだって言ったら、私のこと見放す?」
聞くと、実弥はこう言った。
「んなこと言うお前が妖精だろ。頭わいてんのか。妖精なんて見放したくても見放せねえわ。」
うん、殴るっ!何かとてつもなく固いもので。
殴る!!!!!!!