第8章 不可思議
私は二人からもらった多めのお金を持ってカナエとの待ち合わせ場所に向かった。
「~!さぁ行きましょう!私行きつけの美容院があるの!」
カナエについていき初美容院へ。
オシャレな外観に気後れしているとカナエが先々に入っていくので慌ててついていった。
「あら、カナエちゃんいらっしゃい。」
「こんにちは~。言ってた友達連れてきました。」
「あぁ、その子が。こんにちは。」
女の店員さんに声をかけられ上ずったこんにちはを返した。
「緊張しないでいいの、私も整えてもらうから~」
「……」
私は黙ってうなずいた。
他人にシャンプーをしてもらうのも初めてで、とてもドキドキした。カナエがはあの女の店員さんが担当していて、私の担当は別の優しい男の人だった。
「美容院初めて?」
「は、はい…」
「伸びてるね~、今までどうしてたの?お母さんが切ってた?」
「はい…」
店員さんが髪の毛に触る。
私は緊張とは違うものを感じた。少し悪寒がした。
「どうしようか」
「えっと、わ、私、短い方がいいって言われたことがあるんですけど…。」
「そうだね。バッサリいってみようか。でも短すぎるとセットが大変だし、結べるくらいで良いかな。」
「はい。」
私はいっこうに落ち着かなかった。
……冨岡くんが距離感を理解してないのもそうだけど、私は男の人と距離が近いとだめなようだ。
原因があまりにもハッキリしていて嫌だった。どう考えたって父親だ。
話すのは問題ない。店員さんと話すのも慣れた。…美容院は女の人が良いかもな。
小さい男の子とか平気なんだよね。玄夜くんもそうだし。
あと平気なのは……。
いやいやいや!
さ、実弥は関係ない…から。