第8章 不可思議
「!すごく似合ってるわ~!」
こんなに短いの初めてかも。伸ばしっぱなしの髪は肩ほどにまで切られた。前髪もすっきりした。
「お、落ち着かないな。ダメダメ、前髪はやっぱり目を隠すくらいが…。」
「何言ってるの!ほら、次のお店に行きましょう?新しくオープンしたのよ!」
カナエの活動力を見習いたい。
私は服屋に連れていかれた。
「ここ、安くて可愛いの!最高よ~。」
「へぇ」
カナエが興味のある服めがけて歩いていく。
私はただついていった。
「、試着してみたら、これとか!」
「………おぉ」
私は思わず悲鳴に近い感嘆の声をあげてしまった。
花柄のワンピースだった。今まで私服でスカートを着たことがなかった。無地の白か黒しか着たことがなかった。
なのに、これを着ろと??
「いや、こういうのが…」
「え?その地味なの?」
カナエはいとも簡単に私の傷をえぐった。
彼女に負けて結局試着することになった。いかん。スースーする。
「やっぱり似合ってるわ~!それにしましょうよ!」
「……そ、そう?」
「着ているうちに慣れるわよ!ほら靴も!サイズは大丈夫かしら?」
「ちょ、カナエ、休憩させて」
しかし彼女はこれもこれもと服や靴をたらふく持ってくる。
「に着てほしいって思っていたの!」
キラキラ輝いた目で言われるともう何も言えない。
新しい一歩というのは踏み出せないものだ。
踏み出したその一歩は正しいものなのか。
新しい髪型、新しい服、新しい靴。
「…今日は七五三か?」
帰り道にたまたま会った実弥にそう言われ、私は半泣きで家に駆け込んだ。
いいもん。おじいちゃんとおばあちゃんは褒めてくれたんだから。バーカバーカ。