第8章 不可思議
そのあと、カナエと色んな場所を巡った。
服屋、本屋、アクセサリーショップ。
私は楽しそうに喋るカナエにただ相づちを打った。
ドラッグストアでコスメの話をされたときなんて、あぁそうしか言っていない。
今も昔もそういう類の物には興味がない。
「!ゲームセンターでプリクラ撮りましょう!!」
「うん、そうだね」
今日一番発した言葉とともに私はカナエについていった。
初めて撮るがカナエは慣れているみたいなので真似をした。
落書きとかも何を書いたらいいかわからずただスタンプを押しまくった。
「この、すごく可愛い」
カナエが出来上がったプリクラを指差す。
……やっぱり、私の笑顔って不細工だな。作り笑いみたい。
「そんな顔しないの」
「わ」
カナエが私の頬をツンツンつついてきた。
「私ね、オシャレするのが好きなの。可愛いお洋服とか、まだはやいって怒られちゃうけどお化粧とか。すっごく、楽しいの。」
「……そう」
カナエは綺麗だ。可愛い服も似合う。さっき買ったばかりのリップだって。
私は全然。小学校の服がまだ着れるからそれだけ。しかもスカートは制服以外で着たことがない。トレーナーにズボンとか。髪の毛だって…一年近く切ってないだろうか。さすがにそろそろ邪魔だなぁとは思うけど。
「もそんな何かが見つかると良いわね。…ううん、きっと見つかる。きっかけさえあれば、人の心は花開くわ。」
そう言ってカナエは私の長く伸びた前髪を整えてくれた。
「好きな人ができたんだもの。変わるわよ、。」
「なッ……!?」
「ふふふ、まずは髪の毛を切らないとね。」
「…か、母さんが切ってくれたらね……良いんだけど」
もう二度と叶わない望みを吐き出しながら、私は笑った。
「明日の日曜日、うんとイメチェンしてみない?私付き合うわ!」
「いや、一日部活だから…」
「じゃあ、また次のお休みね!」
カナエは楽しみだわ、と手を合わせた。
正反対に、私は不安しかなかった。