第8章 不可思議
「大丈夫よ、は可愛いもの。」
カナエが言う。…そういうカナエが一番可愛いんだけどな。
「心配かけてたのか…。知らなかった。」
「この前のことも怒ってたわ。宇随さんにね。何で巻き込んだんだって。」
「……あれは…宇随先輩も失踪してたんだから仕方ないよ。」
そもそもあのトンネルに連れていったのは私だし。
「ったら、どんどん危ないことに手を出すんだもの。私も心配よ。」
「危ないって…。こんなに平和な世界でそんな簡単には死なないよ。」
「もう、そういうことじゃないでしょう?」
カナエは少し怒ったようだった。
「平和な世界だからこそ平和に暮らすのよ。何でそんなに危ないことばかりしたがるの?」
「……別にしたいわけじゃ…。」
ただただ巻き込まれたというか、もうこれは不可抗力なわけで。
私だって危険なことは嫌だ。でも避けられないんだから。
「…わかった、気を付けるよ。」
「うん!それがいいわ!」
カナエはやっぱり笑っている。
「…カナエの笑顔は綺麗だね、羨ましいな。」
心の底からそう思った。