第7章 自覚
実弥が人の少ない通りをおぶってくれている。
「……お前のばあさんじいさんよぉ、お前がトンネルから帰ってこねえって知っても慌てなかったよ。」
「…そっか。」
「落ち込むなよ。話があんだっつの。」
実弥が話してくれた。
「ばあさんとじいさんが小さい頃、あのトンネルがまだなかった頃にあそこらの村で伝説があったらしいんだ。」
「伝説?」
「夜になると鬼が女の子を拐うんだとよ。丁度お前くらいの年のな。」
私はそれをどこかで聞いたことがある気がした。
「ぐ、っ、くっそ…!!」
頚を斬った鬼が私を睨み上げています。
神隠しの血鬼術を使う鬼でした。人を拐い、食っていました。
思えば、ともに任務に参加していたのは鬼殺隊になりたての男の子でした。
もう一人、彼の仲間がいましたが他の鬼を追いかけたはずです。
「急所は避けましたか」
「……はい」
「良かったです。出血している血管はわかりますか?止血できるならしてくださいね。」
彼の腹にざっくりと傷が入っていましたが、どうやら深くはないようです。
彼の目に潜む私への憎悪。嫌悪感。
他の隊士も同じ目を私に向けていました。人殺しの報い。当然です。
「おのれ…おのれ小娘…」
「すみません、たまたま近くを通ったものですから。」
「来世で…来世でお前を拐ってやる食ってやる殺してやる。」
鬼がハラハラと消えていく。
「……来世では幸せな人間になってほしいものです」
私は目を閉じた。刀をおさめる。
「私は来世も鬼殺隊なんてごめんです。」
というか、来世なんて来ないでほしい。
私はそう願っていた。
「あんた、来世はどうなりたいんだ」
「さぁ」
「あんたと俺がお友達になったりしてなぁ」
「面白いこと言いますね」
「今度は俺があんたを助ける、貸し借りなんざごめんだ」
「なら今生で返してほしいものですね。もっとも、私は物忘れがひどいので君のことを忘れて貸したものも忘れていると思いますが。」