第7章 自覚
「…何だか、その鬼…会ったことある気がする」
私が言うと、実弥はそうかとだけ答えた。
「ばあさんいわくさ、鬼は拐っても数日で返してくれるから心配いらねえってよ。本当にそうなってビビったわ。」
「…あはは」
多分、私はそうならなかった。そんな気がする。何で帰ってこれたのかなぁ。
「何であんなとこいたんだよ」
「……ちょっとね」
「あ?」
宇随先輩のことは黙っておこう。
というか、宇随先輩は無事なのだろうか。
「もしかしたらさ…心霊現象って、血鬼術なのかな。」
「あり得るなぁ。鬼はいねえけど、そういう形で生まれ変わっていてもおかしくはねぇ。」
「……ふふ、何だか面白いね。」
実弥の背中は逞しい。頼もしいのは変わっていない。
「実弥はいつも助けてくれるね。」
「…別に」
実弥は少し黙ったあとに言った。
「そうしてぇからそうしてる。悪いかよ。」
私は何だか、かっこいいなぁと思ってしまった。
………?
実弥が、かっこいい?
「おい、黙るな。恥ずかしいだろ。」
「………」
「おい!」
私は彼の背中に顔を埋めた。
顔が上がらない。
「変なやつだな」
…良かった、気づいてないみたい。
こんな真っ赤な顔、見られたくない。
ちなみに、宇随先輩とあの三人は翌日に保護された。
いつまでたってもあの男子高校生達は出てこなかったし、宇随先輩と話したが思えばあんな制服の高校は見たことがないので、私達とは違う場所から来たのかもしれない。