第7章 自覚
トンネルを出たところで気づいた。
空が真っ暗だ。
そういえば気配を辿るのに夢中でここがどこかわからない。でも何だか見覚えがあった。
しばらく歩いた。人気がない。
待てよ……ここって。
家のすぐ近くの…。
私はスマホで調べた。
そうだ、ここ、治安が悪いことで有名な裏通りだ。あのトンネル、小学校の時に幽霊が出るとか皆言ってたとこじゃない!?いないじゃんそんなの、嘘つき!
「…あ」
電波が悪いと思ったら圏外になった。ヤバイ。帰れるかな。
「………うぇ~ん」
そう困っていると前方にしゃがみこんで泣く小さな男の子が見えた。玄弥くんより幼い。
……やば、幽霊、いた。
と失神寸前になっていると。
男の子が顔をあげた。
目が合った。
私は不思議な感覚に陥った。
その瞳に吸い込まれそうな、そんな予感。
「どうしたの?」
私はつい話しかけていた。
「ま、まよっちゃったよ、ぼく、かえれないの」
幽霊なのだろうか。私は手を伸ばして男の子の手に触れた。彼はぎゅっと私の手を握り返した。
暖かい手。
小さな手。
私はその子から生を感じた。
「帰れないの?」
「うん、かえれ、ない」
「泣かないで」
その子の涙を拭った。
「私と一緒に行きますか?」
「……うんッ!!!」
にっこり笑った笑顔。とても可愛らしかった。
私達は手を繋いで歩いた。彼はヨチヨチと歩いていた。少し腰を屈める必要があったが苦ではなかった。
(長い道だなぁ)
歩けど歩けど明るいところにつかない。そろそろ大きな道についてもいいのに。
というか、周りの景色が変わった気がしない。
「おねしゃん」
「…私?」
おねしゃんって、お姉さんってことかな。可愛い。
「おねしゃん、おなまえは?」
「私…霧雨。霧雨。君は?」
「ぼくね~」
男の子は嬉しそうに名前を言った。
「むいちろ!」
その瞬間、私は暖かい光に包まれたような、柔らかい浮遊感に襲われた。