第6章 花開く
「……ぁ…」
落ちた。バトン。
実弥が転んだ。後ろから来た黄組の選手とぶつかった。
「さね「行けッ!!!」…!!」
実弥が転んだままバトンを差し出してくる。
私は力強く今度こそつかんだ。怪我してないかな。ぶつかったときすごい音したけど。
そんなことは言わず、走り出した。
「胡蝶抜かさねえと許さねえかんなッ!!!」
……言ってくれるねぇ。
私は俄然やる気だった。
もう無我夢中で走った。声援とか、何にも聞こえなくて。あんなに頑張って叫ぶのに聞く側はこんなもんか。
カナエが前にいる。実弥とぶつかった黄組は完全に引き離した。
走る距離は楕円に引かれたコートの半円分。この距離なら。
追い付く。
リレーの練習をしてわかったことがある。私は加速するらしい。走れば走るほど速くなる。それは前世でも言われたことがあった。覚えてる。
カナエ、あなただよ。あなたが見つけてくれた私の“癖”。私は戦闘中にどんどん速くなってるって、教えてくれた。
ラスト二メートル地点でカナエを追い抜いた。
「と、み…とみーーッ!!!!」
アンカーは冨岡くん。メンバーで彼が一番速かったから。
「俺はとみーじゃない」
バトンを渡す。彼は走り出した。
いや、とみーって、ニックネームじゃないよ!?岡くん、まで言えなかったからだよ!?
そんな言い訳もできず、私は脇に避けて倒れこんだ。隣にカナエも倒れてきた。
「負けちゃったぁ~!」
カナエが叫ぶ。
私は心からにっこり笑った。
「一番!白組です!ぶっちぎりでしたー!!!」
実況が聞こえた。
冨岡くんが涼しい顔でゴールテープの向こうにいる。
美味しいところは持っていかれた。
でも。いいや!
本当に楽しかった!!
結局総合優勝は赤組で、私はカナエに負けてしまったんだけどね。