第6章 花開く
泣き止んで、実弥と少し話した。
「…実弥、よくわかったね」
「わかるわ、あんだけ派手に呼吸使われたらな。見えてんだよ霞がよ。」
実弥はわしゃわしゃと頭を撫でてきた。
「あんがとな、玄弥のために。」
「………何か、すごい惨め」
私は頬を膨らませた。
「お前が年上だったのは何年前だよ。馬鹿なことで拗ねんな。」
「えええ!?こ、心呼んだの…!?」
「馬鹿の考えてることはわかる。そろそろいくぞ、涙乾かせ。」
実弥がスタスタ歩いていく。私は慌ててついていった。
「あ!ー!」
カナエがうきうきで私に近寄ってくる。というかハグしてきた。
…何というか、スキンシップの激しい子だったみたいだ。まぁ女の子どうしなら普通だけど。
どうも私は前世を引っ張りすぎだ。しっかりしろー!
「選手の入場です!」
アナウンスに合わせ皆が行進してグラウンドの中心に向かう。
「私、負けないからね~!」
カナエが言う。
成り行きで参加したリレーだったけど、何か燃えてきたかも。
放送部の実況にも力が入る。甲高い皆の歓声。白組と赤組が競っていた。
実弥にバトンが渡る。やや遅れて宇随先輩に。
その二人からバトンを受けとるのは私とカナエだ。
「宇随さーん!頑張ってくださーーい!!!」
カナエが声援を送る。宇随先輩が親指を立てる。女子から黄色い声援があがる。
私は特に叫ばない。何かもう、色々と必死で頑張ってるのは伝わってくるのでただ待った。
「ッ!!!」
実弥が叫ぶ。学校では名前で呼び合わない。でも今は。応援に夢中で誰も聞いてないから。
私に向かって一目散に走ってくる。
何回と、何回も練習した。
バトンパス。
カラン、と音がした。