第6章 花開く
「玄弥っ!!」
おばさんが涙ぐみながら玄弥くんを抱き締めた。
そういえば。
私、迷子になったときがあったな。いつだっけ。こんな風に人の多い…あぁ、多分遊園地。父さんが身なりもくそもないくらいぐちゃぐちゃになって探してくれてた。私を見つけたとき、母さんこんな風だった。
「ありがとう、ちゃん。まさかそんなところまで行ってたとは思わなくて…」
「ううん、見つかって良かったです。」
それから私たちは一緒にご飯を食べた。学校では話しかけてこない実弥と話せているのが嬉しかった。
お昼休みも終わり、午後の競技が終わる。
競技も、体育委員の仕事も私は午前中だけだった。
あとは最後のリレーだけ。
私はそっとテントから離れた。
最初は歩いてた。でも途中から小走りで。誰からも死角になった瞬間全速力で走った。
私は倒れるように校舎裏の芝生に転がった。
肺が痛い。辛い。指が痙攣する。
(ダメだ……この体、呼吸使っちゃ…ダメだ……!!)
私は鬼殺隊じゃない。訓練も鍛練ももうしてない。平和な世の中。鬼はいない。すぐ反動にやられる。特に肺。あの倉庫のときはまだ大丈夫だった。使いすぎるとダメなんだ
応援席には、皆の家族がいた。私もいる。おじいちゃんとおばあちゃん。大切な家族。でも父さんと母さんはいない。何で、今になって優しい二人が出てくるの。おかしいでしょ。
前世もそうだった。殺した父親の優しさと、私を捨てた母親の愛ばかりが私を縛り付けた。
「……ッ、はっ、あ…ッぁ…」
やっと息が吸えた。いつもの呼吸に戻る。荒々しく咳き込み何とか起き上がった。
「おい、大丈夫か!?」
突如声がして、私は慌てて振り返った。
「実弥…」
「どうしたんだよ、どっか悪いのか!?おい!!」
その顔を見て安心した私はボロボロと泣いてしまった。
実弥は黙って私をたたせた。
「…両親がいないの、辛いか」
「……」
私はとうとう子供みたいに声をあげた。
「何で、私っ、いっつも、皆に、嫌われちゃうようなことしか、できないのかなっ…」
「アホ。俺は嫌ってねぇ。」
「もっと、他に、何か、方法あったかも、しんないのに」
「ねぇよ。そんなの何もねぇって思ってろ。悔いるな。」
実弥は乱暴だけど優しい。
泣き止むまで側にいてくれた。