第6章 花開く
「……玄弥くん…?」
人気のない白組のテントの下。
…なぜ、ここに。
「ねーちゃん、遊ぼ!」
「…いや……あの、おばさ……お母さんとか、お父さんとか、お兄ちゃんは?」
「……?」
すると玄弥くんは首をかしげ、キョロキョロと辺りを見渡した。
大きくつぶらな瞳に涙がたまっていく。
「ぃ……いにゃ…いな…い…」
「え」
「いなくなっちゃったぁ」
ボロボロと涙がこぼれていく。
嘘だろと彼を抱き上げあやしながら私も辺りを見渡す。
いない。
実弥は…おじさんと、おばさんはどこ?
(……探すの…?)
私は途方にくれた。
この中を探し回るのは至難の技だ。
全然わからない。その前に、玄弥くんがギャン泣きする。私の不安が伝わったのか玄弥くんは私の胸に顔を埋めてすんすん泣き出した。けれど、泣き声はあげない。
「…ごめん、玄弥くん。」
私は彼を下ろした。すんすん泣きながら足にすがり付いてくる。
四歳になった玄弥くん。大きくなった。もう抱っこすると重い。
(できるかわからないけど…やるしかない)
私は息を吸い込んだ。
(霞の呼吸、秘技)
呼吸の応用。他者の呼吸を探る。
(深奥)
“しんおう”は、最も深いところ。
私が開発した私だけの技、私だけが使える。少なくとも継子は使えなかった。
………いた。実弥とおじさん達。おばあちゃんもいる。皆キョロキョロして。探してる。玄弥くんを探してる。
「ねえちゃん」
玄弥くんが私の袖を引っ張る。
「うん、行こっか。皆のところ。」
私が笑いかけると、玄弥くんはにっこり笑った。