第6章 花開く
体育祭当日。
この日を迎えるまで散々だった。
噂通りカナエは次々に告白を受けていた。
私は、カナエがふった人達全員に告白された。
三美女なら誰でもいいんかい!と突っ込みたくなる。多分、あの人達は私やカナエのことなんて好きでも何でもなく、自分の彼女は三美女だとか自慢したいだけなんだろう。
私の両親と同じだ。
三美女と言われてもいまいち実感がない。私、美女なのだろうか。
鏡を見ても白雪姫じゃあるまいし鏡は答えない。
洗面台の鏡はちょっと長めの前髪や伸ばしっぱなしの髪が自信なさげな私を写すだけだった。
私の顔ってこんなのだっけ。
鏡をのぞけば笑ってばかり。笑う以外の表情ができず。胡蝶さんは化粧をしていたけど私はしていなくて。
鏡を見ることもそのうちなくなった。鏡は布を被ったまま部屋のすみに放置だった。
……容姿のことで言えばまぁまぁおかしいこともある。不死川くんには綺麗に傷跡がそのままあるのに、私は鬼から受けた傷がない。そもそも両足左腕を失って死んだのに、私は五体満足だ。
「、体育祭遅刻しちゃうわよ」
「おばあちゃん」
「どうしたの?鏡なんて見て。あなた、髪の毛切った方がいいんじゃない?顔が良く見えるわよ。」
おばあちゃんが前髪を上げる。
「……髪の毛かぁ。」
…母さんが切ってくれていた。
髪を切るときの母さんは優しくて。
……前世の少ない記憶でもそれだけは覚えている。私の髪を切る母さん…お母様は綺麗な笑顔を浮かべていた。
「ほら、本当に遅刻しちゃうわ。見に行くからね。おじいちゃんなんて張り切ってカメラ持ち出したわよ。」
「本当に?ふふふ、小学生じゃないのに。」
私はいつもより気合いの入ったおばあちゃんのお弁当を持って出掛けた。