第6章 花開く
そろそろ人が集まる時間なので叫ぶのは勘弁してほしいのだが。
「そっか、ちゃん忙しいもんね」
「確かに……」
「でももったいない!だって“さんびじょ”だよ!?」
友達の言う言葉がうまく聞き取れず聞き返した。
「さんびじょって何?」
「学園三大美女の略!」
「あぁ…胡蝶さんの」
私が納得すると彼女たちは驚いたように顔を見合わせる。そして。
「ちゃん…」
「ちゃんも三美女でしょう…?」
「……………?」
首を傾げる。
いよいよ皆、頭を抱えた。
「知らなかったんですか…?」
「えぇ、知りませんでした」
帰り道。胡蝶さんと歩いていた。彼女は私と同じ徒歩通学で、方向も同じだった。たまたま帰り際に会ったので一緒に下校していた。
「……容姿を褒められたことなどないのですが…今も昔も…」
「綺麗な顔だと思いますよ。……それよりッ!!!」
胡蝶さんがグッと顔を近くに寄せてくる。私は驚いて数歩下がった。
「私達、今は友達ですよね!」
「……はぁ」
「私、敬語やめます!霧雨さんのことって呼んでもいいかしら…?」
私は戸惑う。
「だからね、私のこともカナエって呼んでほしいの!私達、今は同学年のお友達でしょう!?」
「あー…カナエ、さん」
「いいえ!呼び捨てで!」
「……カナエ」
「…!!ッ!!!」
胡蝶さん改めカナエは、嬉しそうに抱きついてきた。
私は困って行き場のない手をだらしなくぶら下げていた。