第6章 花開く
リレーの練習が始まった。
リレーにかけ持ち部活三つ。すごく安心する。私、こんなにやることある!!!
宇随先輩と胡蝶さんは同じ色で赤組。何となく気になる。
(…まぁそこそこにして流すかぁ)
なんて、のんびりなことを考えて走った。そこそこなんて言ってもちゃんとやった。
が……。
(なんか…)
視線を感じる。何だろう。そちらを向くと胡蝶さんがいた。
(………?)
じっと私を睨んでいる。私が見ていることに気づくと彼女は目をそらした。
……。
(……まさか)
私は嫌な考えを振り払った。
彼女の目。あの態度。
……前世の時と何一つ変わっていない。
いやいやまさかそんなそんな。杞憂だ、杞憂。
「霧雨、遅いぞ。もっと真面目にやれ。」
「……や、やっているんですが。」
悪寒が。殺気がすごいんです冨岡くん。
集中できません。
私は確信した。
胡蝶カナエは前世の記憶がある。
彼女は私が嫌いだった。
両親を鬼に殺された彼女にとって父親を殺し隊士を殺した私はそれはそれは気にくわなかっただろう。
私はそれで居心地が良かった。
練習が終わり片付けの時間に。使った道具を倉庫に戻す。
白組は私がやることになった。
倉庫の中には胡蝶さんがいた。
棚に道具を戻している。私は少しためらったが気にせず入った。胡蝶さんが私を見る。
露骨に嫌そうな顔をされた。
彼女が私の横を通り抜けてここから去ろうとする。
が、
ガチャン、と倉庫の重い扉が閉まった。
次の瞬間。
「花の呼吸、肆ノ型、紅花衣!!!」
暗闇の中でいまいち見えにくいが、近くにあったプラスチックのポールをつかみ気配目掛けて繰り出す。何に使うものかよくわからないけどありがたい。けどこれ多分、走り高跳びのポール…。
ごめん、陸上部。
「弐ノ型、八重霞ッ!!!」
私は迎え撃った。
ガキンッ!!!とにぶくぶつかる音。
………!?ちょっと待て胡蝶さん、何で向かって来た?
いや待て本当に待てそれはないだろ。
バレー部かなんかのコートの支柱じゃ…鉄じゃない!?