第60章 後書き
天晴は自分があまり強くないことをだんだん知っていきました。鬼に周りの柱が殺されていくのです。決して、誰も弱くないのに。
天晴は自分ができないことは、ほかの誰かに託そうとしました。自分がいなくては春風が泣いてしまうかもしれない。女のふりをして励ますなんてできないかもしれない。
けれど、春風はきっと自分がいなくても大丈夫だと思いました。
彼は、そうなるといつ死んでも良いような気がして、後継者を探すことにしました。結局、天晴の指導についてくるものは誰も現れず、彼は同呼吸の継子を諦め、他の後輩の柱と手合わせをしたりするようになりました。
そこで霧雨と出会います。
霧雨は恐ろしく強く、そして恐ろしく美しかったのです。
天晴は彼女に後継者になって欲しかったのですが、霧雨は霞の呼吸しか習得しませんでした。
それに、霧雨は天晴に興味なんてないようでした。
次に目をつけたのは桜でしたが、彼とは馬があいませんでした。
そうして天晴は後継者を諦めましたが、後継者へとつなぐ意思だけは残そうとしました。
死ぬ数年前になると、自分の感情についてはやはりあまり理解できませんできたが、他人が関わることによって起こる感情の変化はあったようです。例えば、桜に煽られて怒るとか、馬鹿みたいに何もできない霧雨を哀れむとか。怪我をした春風に涙するとか。
最後の最後で、彼は霧雨に名前を連呼され、自分が誰かに必要とされていたことを知りました。
嬉しかったようです。
令和時代では、家庭環境はあまり変わっていませんでしたが、家族は彼の話を聞いたり理解しようとはしていたようです。
自分の感情に関しては相変わらずイマイチわかっていないようですが、その分周りを見たり思いやったり、霧雨にとって良い姉御肌の人物となったようです。