第56章 以上になります、裁判長
二人で帰っていると、私の家の近くに二つの人影が見えた。
「あっ!!おーい!!」
その人物が見えた瞬間、実弥がギラリと睨みつけてきた。えっ、待って。まじ待って裁判長。
こちらに走り寄ってくるのはカナエと桜くんだ。
「で、どうなった?」
じとっとした目で私たちを睨んでくる桜くん。
「お前…!」
「え、ち、違うんですよ、違うんです!!!」
「何言いふらしてんだ!!このアホがッ!!!!!」
「ご、ごめんなさ−い!!」
言いふらすつもりはなかったのだが、少し相談に乗ってもらいたかっただけなのだが!?て言うか、何で二人ともここにいるの!?元旦なのに暇なの!?
「で、ゴールインした!?したの!?ねえ、どうなのお!?」
「ゴールイン…??」
私はキョトンとして実弥に視線を投げた。彼は口をつぐんで、真っ赤になって、プルプルと震えていた。
「へえ〜、何?言いそびれちゃったの?…カッコ悪ッ」
桜くんは最後、渾身の真顔で言った。実弥が頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「ちょっと桜くん!泣いちゃったじゃん!!」
「泣いてねえええええええ!!!!!」
「ぷっ、何だ元気じゃん。……あんまりぐだぐだして苛立たせるなよ。雫波紋突きだからな。」
ひんやりとした殺気のようなものを感じた。桜くんは本気で怒っているようで、声が低い。
こうなると本当に恐くて、小さな体からそんな悪のオーラがどうやったら出てくるのか不思議でたまらない。
「はーい、こーくはく、こーくはく」
「こーくはく、こーくはくー!」
「黙れええええええええええ!!」
カナエと桜くんが妙なコールを始め、実弥が叫ぶ。
「あ、あの〜。私は何にも気にしないから、そんなに怒るのやめなよ…。」
「……。」
実弥はプルプルと震えるだけだった。