第54章 言葉が邪魔をするから
『そして、時々は思い出して…今はいないその人が消えないようにするのです。』
思い出した。
私はそう言ったんだ。
「時々思い出して、父親が消えないようにすりゃあいいだろうが。お前は何も悪くねえよ。……親とうまくいかねえってのは、そりゃ辛いだろうけど。」
実弥がそう言う。
そうか、あの日のこと覚えててくれたのか…。私が忘れちゃってたなぁ。
「……うん、そうする。ありがとう…。」
「おう。」
実弥は歯を見せて笑った。
「元気でたか?」
「……出ました。」
私も笑った。
「んじゃ、帰るわ。明日これるんだったらこいよ。」
「は~い。」
実弥が玄関から出ていくのを見送ったところで、私は首をかしげる。
明日?
明日って……。
「もしもしカナエ!?ねぇどうしようものすごくどうしようっ!?」
『ちょっと落ち着いて?何言ってるの?』
こういうときはカナエに相談だ!ということでヒステリックな声をあげて彼女に電話をかけた。
『でもちょうどよかったわ~。初詣に誘おうと思ってたから。』
「それがすっごく問題なの、ちょっとどうしたらいいのか…!」
『何があったの?』
「実弥が初詣に誘ってきた!」
『本当に!?ちょっと、詳しく!!』
そう言うと、カナエは食いついてきた。
い、言っていいのかな…告白されたって言っていいのかな…。
でも言わないと話せない…。
「絶対誰にも言わないでね」
そう念を押した後で、私は全てを話した。