第53章 落下

「こ、告白だったのか…わけのわからない感情に気を取られて気づかなかった…。」


桜くんはまたじとっと私をにらんできた。


「あのさぁ、何か大切なこと忘れてない？」

「へ？」

「告白されたんだよ？何か思うことないの？」


告白……。告白？

コクハク。コクハク。


コク、ハク…。コ、ク、ハ、ク…。


「……へえ～」


ニヤリと桜くんが笑った。


「ぷぷっ」


とても。


とて～も嫌な顔をしていた。


「はぁ、そっかぁ。そうなんだあぁ。いや～青春だねぇ。お顔が真っ赤ッか。天下の霧雨さんがモジモジしてる…ぷぷぷ。」

「しっ、してませんっ！！してませんよー！！！」


桜くんがからかってくる。そ、そんなに顔が赤いの？鏡がないとよくわかんないや…。


「まあまあ、ともかく早く帰らないと風邪引くよ。僕がここにきた意味がなくなっちゃう。」

「…ソウデスネ」


私は放心状態で桜くんと並んで帰り道を歩いた。


「で、どうなの？幼なじみの告白は嬉しい？」

「どどどどどどどどうなのって、そ、そそそそそそれは」

「落ち着け」


桜くんがばしん！と背中を叩いた。相変わらず容赦ねえ…。


「……僕は告白を受けた以上…何か彼に言葉を伝えた方がいいと思うのだけれど。」

「えっ」


それは…お返事ということだろうか。
嘘、そんな。

私は実弥が好きだ。でも、伝えようとも、どうなろうとも、思っていなかった。カナエの言うゴールインとやらも興味なかったし…！！

それなのに、実弥が私のことを好きだと言ってきた。


「でも、何て言ったらいいのか。それに彼もそんな気配一ミリもなかったのに…。」

「いや…大いにあるように思うんだけど……。まあそれはいい。ともかく、霧雨さんはこのまま何も言わないなら、それは大いに実弥くんを傷つけてしまうんだよ。」

「……そっか。」


桜くんはふう、と息を吐いた。


「あ～めんどくサー。霧雨さんって本当にウジウジウジウジしてるよねぇ。ここは前世と変わらないんだ？」

「う…ウジウジ？」

「実弥くんから感じ取った感情が気になってるみたいだけど、そんなの本人に聞きなよ。」

「聞いたよ。答えてくれなかったの。」

「あぁそう。じゃあもう一回聞けば？」


呆れたように言われ、私は確かにと納得した。