第53章 落下
「とまぁ、それはそうとして…。どうだったの?実弥くんとは進展あったわけ?」
小言が終わったあと、桜くんにそう聞かれた。
そうだ。桜くんに相談してたんだった。実弥のこと。
「ダイロッカン?だっけ。あれは戻ってきたし、実弥の本心はわかったけど、いまいち整理できないことがあってさ。実弥の感情が…その、何ともわからなくて。」
「はぁ、どんなこと?」
私はできる限りわかりやすいように桜くんに説明した。
「川に突っ込んで頭冷やせば?」
「えっ」
全て話し終えたあと、帰ってきた言葉は辛辣だった。
いやいや、そんなこと言われるまでもなくさっき川に突っ込んだんだけどな!!
「あー、もう、霧雨さんってこんなに馬鹿だったの?僕のソンケイを返してほしー…。」
「ええ…!?頭のできと運動神経は前世と違ってないと思ってるんだけどな…。」
桜くんはため息をつき、じとっとした目で言ってきた。
「感情とか、色んなことは置いておいて実弥くんの言葉の意味だけ考えなよ。それくらいはわかるでしょー?」
「言葉の意味?」
そう言われ、脳内で再生してみた。
『俺が大切で、気になって仕方がねえのは馬鹿な幼なじみだ。』
『好きだよ、お前のこと』
桜くんはふん、と鼻をならした。
「純粋な告白だと思うけどね、僕は。惚気られた気分だよ。」
そう言われて私はポカンとした。見かねた桜くんがみぞおちに肘を入れてきた。
「いったっ!!」
「鈍感。」
軽くこづいた感じに見えたけれど、全然そんなことはなく。めちゃくちゃ痛い。
さすが元水柱…!!
桜くんは不意打ちの天才で、奇襲攻撃ならば私でも気配察知ができなかった。あぁ懐かしき前世の記憶よ…。