第53章 落下
おじいちゃんとおばあちゃんが父親の葬儀や遺品の整理に行くため数日留守にすることになった。
私ももう中学生なんだし、一人の夜も平気だ。
「ごめんね、その、折角連れていこうとしてくれていたのに。」
私がそう言うと、喪服の二人は優しく微笑んで、気にしていないと言ってくれた。
二人がいなくなって、私は少しの切なさを覚えたが、今年最後の部活に行くために支度を始めた。
美術部の活動は今日も平和だ。
「そういや、お前ら来年どうすんだ?」
ただ違ったのは宇髄先輩からそう聞かれたことだった。
それを聞いて伊黒くんがピタリと手を止めた。
二人とも、私に何かを言ってくることはない。
私は父の死の動揺を隠せているらしい。
「来年?」
「中学最後だろ?何かやんのか。」
「えっ?」
私と伊黒くんは顔を見合わせた。
「俺は一人だったし何もしなかったけどよ、何か計画すんなら自由にやれよ。」
「……だ、そうだ。副部長。」
「私に丸投げ!?」
伊黒くんはめんどくさそうに言っていた。腹立つ。ふざけんな。
「何かって訳でもないですけど、新歓は本気でやらないとですよね…。このまま誰も入部しなかったら、廃部ですし…。」
「去年は本当に何もしなかったからな。」
じとっと伊黒くんが部長である先輩を睨み付けた。
「お前らいるからいーだろ?まぁ、部の存続危機は確かだな。お前らで何か企画してくれ。」
「えぇ!?先輩なにもしないんですかッ!?」
「あー、俺はパス。俺が新歓に参加したら新入部員が減るって怒られたし、生徒会からクレームきたんだわ。」
「何したんですか!?」
「いや、ちょっとこう、ドッカーン…ってな?」
さっぱりわかりませんけど!?ドッカーンって何!?ダイナマイトでも爆発させたのかっ!?
「…霧雨、俺達で頑張ろう……」
「……そうだね、ポスターのデザインでも考えとこうか…」
私と伊黒くんはコイツには任せられないと悟り、二人で計画を練り始めた。