第5章 夢見る
「あ、不死川」
宇随くんと同じく固まる彼。
「おーい、こっち…」
彼がまだ言い終わらないうちに実弥は公園に入りずんずんこちらに向かってくる。
「おいてめええええええええええっ!!!!!」
怒ってる怒ってる怒ってますよ!?
「何してやがんだあぁ…倒れたって聞いたけどなぁ俺ァよぉ!!何元気に遊んでやがんだクソが!!!」
「不死川くん深いわけが」
「この輩先輩にそそのかされたか!?あぁ!?」
「おいコラ」
「とりあえず帰んぞボケェ…!!」
実弥は置いてあった私の鞄を持って腕を引っ張った。
私がおろおろしていると実弥は振り返り左手の中指を宇随先輩に思いっきり立てた。めちゃめちゃガン飛ばしてた。
宇随くんはなぜかニヤニヤしていた。
実弥は公園を出てもまだ怒っていた。
「まじあり得ねぇ!何考えてんだてめぇ!!」
「違います、思い出したんです。宇随くんのことです。」
ようやく彼が止まった。
私はその隙に捲し立てるように話した。
「美術室で思い出しました。その時に頭が痛くなって倒れてしまいました。そのかわり宇随くんのことを全部思い出したんです。」
「………」
「宇随くんも前世の記憶があるんです。だから「そんなこたぁわかってんだよ」」
実弥が低い声で言った。引っ張っていた私の手を離した。
「……宇随の記憶があることは知ってたっつーの。…俺がよ。馬鹿馬鹿しいかもしれねぇけどよ。」
実弥が言う。
「心配させんじゃねえよ、クソが」
私はハッとした。
……良く見ると実弥は靴のかかとを踏んでいた。珍しい。鞄もチャックが閉まりきっていないし。
急いできてくれたのかな。それなのに、私が公園で宇随先輩と話していたから…。