第5章 夢見る
「ごめん、実弥」
私は彼の背中に声をかけた。
「……いいから帰るぞ。保健の先生が言ってたけどよぉ…まぁお前が話し聞いてなかったのか知らねぇが学校から電話いってっかんな。てめぇのじいさんばあさん心配するだろうがぁ…。」
「そ、そうなの?じゃあ早く帰らなきゃ…。」
「……」
「何?」
実弥の隣を歩く。彼は前を向いたまま聞いてきた。
「…宇随の記憶…思い出してどうだった」
「……?どうって…?別に、宇随くんは宇随くんだなーって。」
「あっそ…。……どうもお前は完全に記憶を取り戻したわけじゃあなさそうだなぁ。」
私は首をかしげた。
「うーん、でも何を思い出せていないのかよくわかってないんだよね。」
「はん、そんなん言って継子のこととか忘れたりしてねえだろうな?」
「あはは、覚えてるよ。私の継子、顔も名前も…」
そこで言葉を止めた。
私は青ざめていくのがわかった。
「…?」
「……嘘、そんな」
「おい!」
霞。
記憶に霞がかかっていた。
思い出せない。
わからない。
継子の存在は覚えているのに。誰かはわからない!!!
私の記憶は、霞んでしまった。
その霞は晴れるのだろうか。
その日の夜、ベッドに寝転がって継子について考えたが、なにも思い出すことができず…。
あろうことかそのまま寝落ちた。
宿題やってなかったのに、くそ。