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キメツ学園【鬼滅の刃】

第52章 言葉なんていらない


どれだけのことがあっても、朝はくる。

私はそれを知っている。


起き上がり、ベッドから降りた。


ちょうどそのとき、私のスマホに氷雨くんからの着信があった。


「…もしもし」

『おはようございます』

「……あぁ、そうか。」


私はクスリと笑った。


「そのうち起こる大きなことって、このことだったんですね。」

『…そうです。』

「………氷雨くんは、お葬式に参加するんですか…」

『まぁ、叔父に当たる人ですからね。つのる思い出はありませんが。あなた、大丈夫ですか?』

「…大丈夫だと、思います。」


氷雨くんの電話越しの声は優しかった。


『では、その時にお会いしましょう。』

「……あの、氷雨くん」

『何でしょうか。』

「私、今…どんな顔したらいいのか、わからなくて。」


素直にそう言うと、氷雨くんは答えてくれた。


『顔なんて関係ないじゃありませんか。…肝心なのは、あなた自身の心なのですよ。』

「…でも。」

『もう笑うだけのあなたじゃありません。』


氷雨くんの言葉に、涙が目にたまる。


「わかんないです。私、もう、笑えもしません。」


私は泣くまいとこらえた。
けれど。視界がぼやけて。


『笑いたくないなら、笑わないでいいのです。』


氷雨くんは続けた。


『それがあなたらしくて、私はすてきだと思いますよ。』

「父親が死んだのに、泣かないなんて。」

『父親が死ねば泣きなさいと誰が言いました?』 


私は出かけていた涙が引っ込んだ。


『さん、あなたは…気づいているのでしょう。何が悲しいことなのか。なぜ自分が今泣こうとしているのか。』

「……」

『あなたの父上が亡くなって、あなたは悲しくも何ともなかった。ただあるのは虚しさや怒り…。父親を想うことができない自分に涙している。違いますか?』


その通りだった。

折角引っ込んだ涙がまた出てきて、ついにはこぼれた。
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