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キメツ学園【鬼滅の刃】

第52章 言葉なんていらない


電話が切れた。よかった。最後に何とかお休みは言えた。


(………あーぁ…)


何かと最近、嬉しいことや楽しいことが多すぎて。


(忘れて、いたなぁ。)


父が死んだといっても涙は出ない。悲しみもない。けれど、心に大きな穴が開いた。

前世でも、今世でも。私の心を縛り上げた父親。…私が、見捨てた実の親。


(最悪だ…。)


絶望。

また違った類いの絶望だった。

私の未来が暗く染まっていく。
父親が、死んだ。


もう二度と話せない。わかりあえない。私は父親から解放されてしまった。


ねぇ、どうして私に乱暴をしたの。どうして私を叩くの。
どうして、私を見てくれなくなってしまったの。


そんな言葉をもう聞いてもくれない。


未解決の、ミステリー小説みたいじゃないか。


「ちゃん」


上から声をかけられて、見上げた。


「何やってるんだ、こんな時間に」


肩で息をした、実弥のお父さんだった。


「家から出ていくのが見えたから…。大丈夫?まだおばあちゃんたち帰ってこないのか?」


アスファルトにパジャマにコートを羽織ってへたり込む私。
そりゃあ問題視されるか。


「……大丈夫、です。ちょっと、外に出ただけだから。」


苦しい言い訳だ。頭が働かなかった。


「………帰ります、ありがとうおじさん。」


私は微笑んで、立ち上がった。

スマホが光った。


……今度はおばあちゃんから着信か。


「…出なくていいのか」

「はい」


内容が予想できて、出なかった。もう眠ったことにすればいい。私は、ベッドの上ですやすや寝ている…。そういうことに。


私はおじさんに連れられ家に帰った。
誰もいないなら泊まっていくといいと言われたが、私は断った。

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