第51章 もっと言葉を教えて

「なあ、真面目な話していいか。」


実弥が急にそう言った。私は立ち上がった。幸いにも怪我はしていなかったようで、すんなりと立てた。


「何？私の話？さっきの続き？」

「…まあ、そうだなぁ。」


実弥が優しい声音で言った。


「お前は馬鹿で頭がどうかしてるから、言わせてもらうことにした。」

「なぜ私は罵倒されているんだ。」

「俺がお前のことどう思ってるかって聞いたな。」


とりあえず頷いた。


「好きだよ、お前のこと。」

「うん、ありが……と…」


ん？

実弥の感情が…。


「えッ！！？？」

「おい、今夜だから叫ぶなよ。」

「えッ！！？？」


何と表したらいいのか、この感情。


「……。」

「…かたまんなよ。叫ぶか黙るしかできねえのかァ。」

「…あ、えーっと、いや、だって。」


私は素直に戸惑っていた。

カナエもよく私に大好きって言ってくれるけれど、この感情とは違う。…はず。


「わかんないよ。なんて言うの？その、こんな感情あんまり向けられたことないし。どうやってこの感情を言葉にするの？」

「俺に聞くな！！お前、今どんだけ恥ずかしいこと言ってるのかわかってんのか！？」

「そ、そんなあ…！わからないものはわかりません！！」


実弥の“好き”は、他の人の言うそれと違う気がした。


「あんましこう言う例えしたくねえけど…煉獄の言ったことと同じなんだよ。」

「……はあ、ソウデスカ。」

「何だその疑いの目はァ。これでもめちゃくちゃ緊張してんだぞ。」

「だって、感じ取れる感情がよくわかんないんだもん。」


私はキョトンとしてしまった。

実弥は盛大にため息をついた。


「……馬鹿野郎…」